尿タンパク陽性ー少し深く理解してみよう

腎臓病

 

症例:65歳男性, 健康診断で尿たんぱく1+とのことで来院

さてここで, 尿タンパクってそもそも何でしょうか?

 私たちの腎臓はいろいろなものを処理してくれています. 尿タンパクは健常人でも認められますが病的に出ている場合に問題となります.

 病的の目安は,  尿中タンパク>  150mg/日

 尿タンパクは, 尿中に排出される可能性のある複数のタンパク質の総称になります.

 代表的なものとしては下記です.

タンパクの種類(%は尿タンパク中に占める割合)サイズ特徴
Tamm- Horsfall protein :THP(別名, ウロモジュリン) 20%9-35mg/d
85kD
・ヘンレ上行脚から分泌
・全ての円柱の鋳型
・尿路感染症からの防御機構, Caの結晶化を防ぐ.
・ADTKDの発症に関わる.
アルブミン 40%<20 mg/d
69kD
・血清タンパクの中で最多
・ごくわずかの量が濾過され再吸収されるので糸球体障害がない限りは大量に尿中には出ない.
レチノイン結合タンパク(RBP)<163μg/d
21kD
・移植腎拒絶の早期に上昇しうる.
α1 MG<19 mg/d
27kD
・Hbと結合し抗酸化作用を有す.
β2 MG<300μg/L
12kD
・全ての有核細胞から産生
・Class1 MHCの構成
・Aβ2Mアミロイドの前駆体(透析効率の評価の指標)

 大分子タンパクは基本的に糸球体で濾過されず, 小分子タンパクのみ濾過されます.
大分子タンパク:THPとアルブミン
・小分子タンパク:アルブミンよりサイズが小さいタンパク質

 よって本来であれば,

尿の定性検査で主に検出するのはアルブミンであるため, 正常は陰性です.

 尿タンパク質の測定方法は尿の試験紙方が有名ですが, 他にどのような測定方法があるでしょうか?

 聞いたことがある測定方法としては, 下記の4つでしょうか.

試験方法利点欠点
尿試験紙・アルブミンの同定
・簡易で安い.
・低分子タンパクは同定できない.
・偽陽性:pH>7.0, 濃縮尿, 血尿
・偽陰性:希釈尿
尿P/C比・アルブミンのみならず検査可能
・蓄尿のタンパク尿と相関している.
・日内変動
・血清Crは筋肉量が多いと過大評価するが, 逆数であり過小評価となりうる.
尿Alb/Cr比・糸球体疾患を拾い上げることができる.
・末期腎不全への進展のリスク因子と考えられいる.
・高額
・非アルブミン性タンパクを見逃す.
・尿の濃度に影響を受ける.
蓄尿・ゴールドスタンダード・煩雑
・尿Crで正確性の確認が必要

 日常診療でも上記の4つが状況に応じて利用されます. 特に尿試験紙と尿P/C比が多用されているのではないでしょうか. この2つを併用する時に知っておいた方が良いことがあります.

 尿定性検査は正常だが, 尿P/C比が上昇している場合,
 アルブミン以外のタンパクが増えていることが想定されます.


 例えばこの解離現象が認められた場合, 免疫グロブリンの軽鎖(κ:22.5kD, λ:45kD)も小分子タンパク質であるため,軽鎖が増加するようなMタンパク血症に気づくきっかけになります.

 他に参考として尿Alb/Pro: <0.4では尿細管間質性, <0.25では軽鎖腎症を示唆するという報告があります.

 アッセイ方法も複数ありますが, ここは参考までにで良いでしょう.

確認方法アルブミンLMWタンパク軽鎖ライソゾームヨード造影剤
試験紙法±±
アセチルサリチル酸
総タンパク
アルブミン

 特に有名なのはアセチルサリチル酸法であり, 多くの尿タンパクに反応することが可能となります.

 尿タンパクの奥深さを少し感じることはできたでしょうか?

 まとめ

 ・ 尿タンパクを構成するタンパク質は複数種類ある.

 ・ 健常人でも尿タンパクは出ているが, それは病的かどうかが問題である.

 ・ 尿試験紙法(定性検査)は尿中のアルブミンのみを同定するため,
   他の尿タンパクの同定はできない.
 ・ 尿試験紙正常, 尿P/C比上昇は小分子の尿中タンパクの増加を示唆する.

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