悪性腫瘍のスクリーニングー透析患者編

透析

 症例 糖尿病性腎症で血液透析を開始され10年経過した56歳男性, 症状は特にないが, がん検診は必要ですか?と質問があった.

 Q. どう対応しますか?

 A. 下記の知識を持った上でスクリーニングを個別化

 1 透析患者の寿命

 正確に見積もる事は難しいです.

 様々な予測ツールを参考にしますが, おそらく不良です.

 2 透析患者の癌の疫学

 米国のデータですが、腎癌の頻度が上昇します.

腫瘍の種類標準化された発生率
全ての腫瘍1.42
腎臓/腎盂4.03
膀胱1.57
乳房1.42
非ホジキンリンパ腫1.37
1.28
大腸/直腸1.27
膵臓1.08
前立腺1.08

 3 透析患者の検査の感度・特異度

透析患者で起こりうる問題

・便潜血→偽陽性率↑

尿毒症性の血小板機能不全や抗凝固薬使用による臨床上問題にならない粘膜出血の頻度↑

・マンモグラフィー→偽陽性率↑

乳房の微小石灰化↑, 腺腫の検出↑, 乳房の濃度上昇↑

・腫瘍マーカー→偽陽性率↑

CA125, SCC, NSEの偽陽性率↑

PSAも偽陽性率↑

 では具体的にどうしましょうか?

キーワードは個別化

 1 寿命を予測する, 2 悪性腫瘍のリスクを見積もる, 3 スクリーニングの潜在的な利点と欠点を確認, 4 患者の価値観や好みの確認, 5 この患者は将来移植をする可能性の見積もり

 腎臓/腎盂癌に関しては, 他の悪性腫瘍よりも頻度が多いことがあり, 議論の余地もあるが2-3年に1回, CT検査で評価されることがあります.

 ただし他の悪性腫瘍と同様に個別化して対応します. 本論文中では, 腎移植予定者や発見したことで寿命が伸びる可能性がある場合には実施すると記載されています.

 注意点として, フローチャート は米国での場合であり一例です.

 一方, 日本での透析患者と悪性腫瘍に対するスクリーニングに関しては, 2017年のこの報告がまとまっています.

 米国のもの同様個別化が重要との記載がある上で, 日本の場合は具体的に上部消化管内視鏡検査を1年ごと、便潜血検査を年1ー2回実施し陽性であれば大腸内視鏡検査を考慮するとなっています.

 また泌尿器悪性腫瘍評価に関してはも年1回程度の腹部超音波検査ないしCT検査と記載されています.

 いずれにおいても長期予後が認めない場合には無意味である可能性についても言及されています.

 まとめ

 透析患者の悪性腫瘍のスクリーニングのキーワードは個別化である.

 参考文献

 米国:Cancer Screening in Patients Undergoing Maintenance Dialysis: Who, What, and When Am J Kidney Dis. 2020 Apr 15;S0272-6386(20)

 日本:透析患者と悪性腫瘍 日腎会誌 2017;59(5):610‒614.

 

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