症例:55歳男性, 尿が赤いということで来院, これまで既往なし, 疼痛なし, 使用薬剤なし
尿が赤い人は,
①見た目が赤くなっているだけ(薬剤や食事)
②肉眼的血尿
を区別するために最初に遠心分離を行う. 赤い沈渣と上澄ができれば肉眼的血尿であると最終判断できる.それ以外の結果の場合は尿の試験紙に浸してみて, ヘモグロビン尿, ミオグロビン尿を考えます.
なお、肉眼的血尿となるのは、1Lの尿の中に1mlでも血液が混入すれば認められます. 尿から凝血塊が認められれば, 泌尿器悪性腫瘍の可能性が高まります.
では具体的な疾患は何でしょうか?
1 血尿が出るタイミングで部位の想定
最初のみの場合は尿道, 最後のみの場合は前立腺や膀胱からの一部, 排尿中ずっとであれば膀胱や尿管, そして腎臓疾患からの血尿を考えます.
2 病歴+血尿が原因同定に有効です.
例えば,
感冒の時に同時に肉眼的血尿が認められる場合はIgA腎症の可能性が高まる, また排尿障害が認められる場合は前立腺肥大症の可能性が考えられるなど, 病歴との組み合わせも考えます.
3 具体的な疾患
・尿路上皮癌
・腎癌
・前立腺肥大症
・腎動静脈奇形
・腎梗塞
・糸球体疾患
・尿路結石
・出血性膀胱炎
・特発性腎出血
それ以外の稀なものとして,
運動誘発性血尿, ナッツクラッカー症候群, Loin Pain hematuria syndromeなどがあります.
表題の患者は, 本当に肉眼的血尿があるのかの確認のための尿検査(定性, 沈渣)を確認し, 併せて腎機能障害の有無を確認します.
加えて, 病歴で泌尿器悪性腫瘍のリスク因子がないかを確認します. リスク因子がある場合は泌尿器悪性腫瘍を念頭に腹部超音波検査, CT尿路造影, 膀胱鏡の適応を含めて泌尿器科に相談します.
肉眼的血尿で最も重要なことは, 常に泌尿器悪性腫瘍の可能性はないのか?と考え安易に終診とせず, フォローアップすることである.
まとめ
・尿が赤い場合は, 肉眼的血尿かそれ以外かを見分ける.
・肉眼的血尿は1度認められただけでも, 慎重なフォローアップが望まれる.
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