症例 76歳 男性 敗血症による急性腎障害でRRT(腎代替療法)を開始.
尿量が200ml/日, Cr 4.6mg/dl
さてこの患者のRRTを離脱する基準は何でしょうか?
集中治療領域では急性腎障害で一時的にでも腎代替療法が必要となる患者が一定数います.
どのタイミングでRRTを開始すべきか?
これは集中治療領域であれば誰もが直面するクリニカルクエスチョンです.
これに対する大雑把な回答は「現時点では早めであろうがなかろうが関係ない」となっています. 最近ではSTARRT-AKI trialが話題でした.
では次に,
「開始したRRTを経過が安定した結果, 終了する基準は?」
1つ前の質問よりさらに情報が少ないですが重要なテーマです.
早期に終了 vs 遅れて終了
早くRRTを終了する立場の意見としては, 透析カテーテルの留置期間が長いほど感染のリスクや出血, 血栓のリスクは上がります. また残腎機能も透析中の低血圧などで低下することが言われています.
一方で, 誤ったタイミングで早く透析を終了してしまった場合, 再度, 急性腎障害の合併症(体液過剰, 抜管の遅延, 電解質異常, 尿毒症など)によりICU滞在期間が伸びる可能性すらあります.
よって,
「いいタイミング」
で腎代替療法を中止する必要があります.
RRTの開始に関してよりも情報が少ないですが重要なテーマです.
いくつかの観察研究がありますが, 複合的な要因が多く決定的ではありません.
参考となる所見は
尿量>400ml/日 利尿剤なし
尿量>2300ml/日 利尿剤あり
のいずれかを達成した場合80%で透析を離脱できるとする報告や,
24時間の尿量で尿Cr, 尿BUNを参考にする報告などもあります.
1つ参考になる報告があるので紹介します.
上のフローチャートで重要なことは,
①血行動態が安定しているか, ②呼吸状態は良いか, ③AKIとなった原因への対処が同定され十分に対処されているか, ④尿量>30ml/時間か, ⑤24時間蓄尿での尿Cr≧5.2mmol/L
上記を全て達成して初めてRRTの頻度などを減らしていく(ウィーニング)していくとするものです.
もちろんこれは1つの提案なので参考にする程度ですが, エビデンスの少ない領域なので参考にする価値があります.
まとめ
急性期の腎代替療法の開始と離脱は(おそらく)永遠のテーマである.
離脱に関しては, 開始に関してよりもエビデンスが少ないため, 複数の要因を加味して対応する.
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