症候編:尿が赤いです?健康診断で血尿と言われました。

外来管理

症例1:50歳男性, 今日尿が赤色に見えました.

症例2:25歳男性, 尿検査で血尿があると言われてきました.

 血尿に関する相談は大体, 上記のいずれかであることが多いです. このような方を見た時に何を考えるでしょうか. その裏側の話をしてみようと思います.

 血尿患者のアプローチ
 Step0 血尿と言われた時の状況と, 現在の症状の有無と腎機能障害含めた検査異常がないか確認
 Step1 尿検査の再検査 一過性かどうか?
 Step2 見た目が赤い(多くの場合は肉眼的血尿)か?
 Step3 真の顕微鏡的血尿か(目視で確認)?

Step0 
 まず大事なのは, 尿が見た目で明らかに赤いか, 現時点で何か症状があるか, 腎機能障害は既にあるのか?ということです. 上記いずれかがある場合はゆっくりと評価する(=何回か外来に来てもらう)のではなく, 早めに対応しなければなと考えます.

Step1

 次に考えるのが再検査をして再現性を確認します.

 これは発熱, 運動など一過性の尿潜血陽性を否定するために行われます. 陽性であればもちろん次のステップに進むのですが, 何回否定した方が良いかに関しては, 注意深い経過観察が必要です.

 では再検査に関してですが, 6週間開けて3回の陰性を確認するとなっています(日本腎臓学会:「一般臨床医のための検尿の考え方, 進め方」, 米国の家庭医療学会でも3回の陰性と記載されています.)

 どうして複数回の陰性が必要かというと, 一過性の中に何らかの基礎疾患を有している可能性があるため, 複数回確認した方が無難という考え方です.

 なお, 1回は早朝尿を採取し, ナッツクラッカー現象や遊走腎の可能性を否定します.

Step2 

 見た目が赤いか?ということを確認します. すなわち, 肉眼的血尿の可能性があるかどうかです. 尿の色でお話をしましたが, 尿が赤くなる原因はもちろん血液だけではありません.

 肉眼的血尿があれば, 泌尿器悪性腫瘍や結石, 尿路奇形を積極的に考え泌尿器科に診察を依頼することになります. 女性だと月経中での排尿は肉眼的血尿・顕微鏡的血尿となりますので別日に再検査を行います.

Step3

 尿は赤くないが, 繰り返しの尿検査で潜血陽性であった場合はどのように考えるでしょうか. 次に行うのは顕微鏡を用いた目視検査(尿沈渣)です. ここで実際に潜血の原因が赤血球かどうかを確認します. なぜならば注意点として尿の試験紙法での尿潜血陽性はペルオキシダーゼ様活性の有無を評価しているだけに過ぎず, 赤血球の存在を決定づけるものではありません. なお, 顕微鏡的血尿は日米で定義が異なることに注意が必要です.

顕微鏡的血尿の定義(沈渣での赤血球数)
 日米で違いがあり、日本の場合は >5/HPF、米国の場合 >3/HPF で陽性となります

 尿潜血陽性+目視で<3 RBC/HPF  :ミオグロビン尿, ヘモグロビン尿, または, 精子が考えられます.

 尿潜血陽性+目視>3 RBC/HPF   :真の血尿=顕微鏡的血尿と考えられます.

 真の血尿は常に腎臓が原因と思いがちですが, 実は腎臓から尿管, 膀胱, 尿道に至るまでいずれでも病気が考えられます. よって注意点として, 目の前の患者が泌尿器悪性腫瘍を持ちうる人かどうか判断する必要があります. 

 泌尿器科悪性腫瘍を持つリスク因子は病歴で確認できます. 重要なことはこれは肉眼的血尿なら当然ですが, 顕微鏡的血尿であっても泌尿器科受診を促す必要があるということです.

 特に顕微鏡的血尿以降の診断の思考過程は血尿診断ガイドライン2012のフロチャートに示されています.

図:血尿と診断した後のフローチャート

*リスクファクター:40歳以上の男性 / 喫煙歴 / 化学薬品暴露 / 肉眼的血尿 /泌尿器科系疾患 / 排尿刺激症状 / 尿路感染の既往 /鎮痛剤(フェナセチン)多用 / 骨盤放射線照射既歴 /シクロホスファミド治療歴

→いずれか1項目該当でリスクファクターありとします.

 尿潜血陽性=腎疾患と決め打ちしません. 基本的に血尿患者のほとんどは無症状であるのが当たり前なので, 尿潜血陽性の患者を未評価のままにしておかない必要があります.

 上記のフローチャートで診断がある程度できるかと思いますが, 原因がはっきりしない場合は, 顕微鏡的血尿も最低でも年1回のフォロー, 肉眼的血尿の場合は, 3年間は3-6ヶ月毎にフォローされることが推奨されています.

 補足としてAUA guideline 2020 microscopic hematuriaを紹介します. 米国での顕微鏡的血尿も考え方はこれまでの記載とほぼ似ています. 

 異なる点は, 尿細胞診検査を最初の評価としないこと. 悪性腫瘍を罹患している可能性を高, 中, 低と見積もり評価することです.

 低リスク:半年毎の尿再検 or 腎臓超音波検査+膀胱鏡を考慮しShered Desicion Makingで最終決定する.

 中リスク:腎臓超音波検査+膀胱鏡を推奨

 高リスク:CT urography(CT尿路造影)+膀胱鏡を推奨
 
 これからもわかることはやはり, 顕微鏡的血尿は安易に良性=問題なしとせず適切にリスク評価を行うことです.
 追記:NEJM 2021年7月に Hematuria in Adultsという総説が出ました。Figたちがとても有益であり記載していきます。 

 ・血尿患者の多くは無症状であり医療者側からの働きかけが必要です

 ・血尿患者をみたら, 一過性, 肉眼的血尿, 顕微鏡的血尿を見極めます.

 ・血尿=腎疾患とは限りません.

 

参考:血尿診断ガイドライン2013

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