症例 56歳男性, CKD stage G3bで外来に通院している. 腎生検の結果, 高血圧に伴う腎硬化症であった. 尿P/C比 0.8 g/gCrである.
さてこの人の管理はどうしましょうか?
尿タンパクは末期腎不全への進展するリスクであり可能な限り減らしたいところ.
では一体どの程度を目標に何を行えば良いでしょうか?
目標:尿P/C<500-1000mg/g (単位に注意)
治療:RAS阻害薬
本症例では腎生検で腎硬化症と診断なされており血圧の管理が中心となり, その詳細は別記事を参考にしましょう.
血圧の管理が良好となった結果, 尿P/Cが改善することもあります. ただ目標値には至らないことがあり, その際に血圧が許す限りRAS阻害薬を投与することが基本的な考え方となります.
尿タンパクが認められる=RAS阻害薬の利用となるのは, RAS阻害薬を使用することで, 輸出細動脈を拡張し, 糸球体濾過圧を減らし尿タンパクを減らすからです.
尿P/C≧500mg/日のCKD患者さんに対してRAS阻害薬が他の降圧薬に比較してCKD自体の悪化を抑制した研究が存在している点からも明らかです.
治療の目標値に関しては<500-1000mg/gが良いとした報告はこちらのガイドラインになります. このガイドラインの記載となるきっかけとなった研究はAASK trialと呼ばれています.
1094人(アフリカ系アメリカ人、18ー70歳, 腎硬化症)の患者に対して2つの血圧の目標値をおき, 3種類の降圧薬を用いました. 3種類の降圧薬とは, ①アムロジピン:5-10mg/日 217人, ②ラミプリル:2.5-10.0mg/日 436人, ③メトプロロール:50-200mg/日 441人でした.
Primary outcome:GFRの減少速度であり, Secondary outcome:複合アウトカム(50%以上のGFR低下, GFRの実数で25以上の低下, ESRDへの進展, 死亡)でした.
この研究の印象的だったところは, 尿P/C≦0.22g/g は-1.35mL/min/年だったのに対し, 尿P/C>0.22g/gでは-4.09mL/min/年だったところです.
本症例では目標血圧130/80mmHg 未満, 尿P/C<500mg/gを目指して, エナラプリルを増量して対応する方針としました.
まとめ
尿タンパクの減少はCKD悪化の予防のためと考える.
治療の目標:尿P/C<500-1000mg/gを達成するために原病の治療+RAS阻害薬である.
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