CKDのマネジメントー貧血編ー

外来管理

 症例 68歳男性, CKDG3b, 生検されており糖尿病性腎症と診断されている. Hb 8.3mg/dlである. 自覚症状は特にない.

 今回は貧血に関してどう考えて対応していくかを確認します. 最近, HIF-PH阻害薬の登場などもあり今後の展開が楽しみな分野ですが, 基本的な原理・原則は変わらないと考えられます. 

腎性貧血の考え方
①腎性貧血は除外診断! 
 → 普段の貧血のワークアップで該当する項目がなくかつ腎不全(eGFR≦60)で 腎性貧血を考えます.

②ESA製剤を使用する前に, 原因は本当に追求できたか確認する.
 →薬剤投与でHb値は正常値を示すことがあり, 原疾患の診断の遅れになりえます.

 腎性貧血の前に貧血と腎臓の関わりについて簡単に考えてみます.

貧血と腎臓の関係
貧血→血中の酸素量の低下→組織の酸素濃度の低下→HIFs(低酸素誘導因子)の増加→Epo産生亢進→骨髄での代償造血の亢進

 上記のサイクルで貧血の改善を試みます. しかしながら腎不全がある場合は, Epo産生が低下することで代償造血が低下し貧血が遷延することにつながります. そのため治療として外からESAを投与することになります.

 昨今話題のHIF-PH阻害薬は, HIFと結合するPHを阻害することでHIFが安定化した状態となり, 本来の転写活性を示しEpoの産生を保つことで貧血を改善すると大まかには考えられています(詳細は今後, 別投稿に記載します).

 では目の前の患者さんに対してどのようにアプローチしていきましょうか?

 

 CKD患者の貧血診療の際の主治医の頭の中
 1 目の前の患者が貧血かどうか? 男性:Hb<13.0g/dl, 女性:Hb<12.0g/dl
 2 これまでのHbの推移を確認 急激な低下は出血の可能性?
 3 検査項目:網赤血球, 鉄, TIBC, フェリチン, WBC 分画, 血小板, vitB12, 葉酸
 4 ESAの投与の検討:Hb<10で検討, 鉄剤の検討:TSAT<20% or フェリチン<100ng/ml
 5 消化管出血を疑う場合は早めに画像検査や内視鏡検査を行う.

 特別なことはありません. まずは貧血の原因をこれまで通り同定していきます. この過程を省略すると, 本来治療可能である病変を見逃すことにつながるため, 必ず確認します. 例え他院からの紹介患者であっても, 原因検索をされているか今一度確認することは重要です.

 具体的な疾患名は下記です(表4). では診断がついたら治療ということになりますが, 治療の原則は①原疾患の治療, ②ESA製剤の適応と開始量(表5), ③鉄剤の投与と処方(おそらく非HDでは内服が多い), ④新規薬の適応(これはまた別の機会に記載します)を吟味します.

CKD患者の腎性貧血以外の原因となりうる代表疾患

鉄欠乏(出血, 消化性悪性疾患)
鉄利用障害(慢性炎症, 腫瘍)
ビタミンB12欠乏
葉酸欠乏
骨髄の異常
薬剤性:ACEI/ARB
溶血 
ESAの開始量(あくまでも参考)
–EPO    25-50単位/kg、週3回
–NESP®    20-30mcg、2週1回
–ミルセラ®  30-60mcg、月1回

Hbの目標値:以前は高く設定されていたが現在は「9g/dl以下、11.5g/dl以上を避ける」

 ただこの目標値は今後も変遷する可能性があります. 高いHb値の目標は高用量ESAの投与となり易く, 脳梗塞などの合併症を増加させたという観点からおすすめされないからです.

 また高用量ESA(ネスプ® で40-60μg相当)以上を投与しても目標Hbに到達しない場合は, 慢性疾患含めた精査を再度行う必要があります. 鑑別疾患として想定されるのは, 表4の疾患を再度確認します. 該当するものがない場合は, 骨髄検査を含めた精査を検討します.

 まとめ

 慢性腎臓病に貧血は合併することが多く, 多くはeGFR≦60となった時に想定される.

 腎性貧血はあくまで除外診断であり, 事前の他疾患の評価なくして診断はできない.

 

 

 

 

 

 

 

 

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